それから小林さんお得意の
「閏人(うるうびと)」の誕生日は2月29日。彼は4年に一度しかないうるう日に生まれ、何をしてもひとり余る、そのひとりになる運命を背負っていた。体育で組体操をしても二人三脚のペアを作っても、必ずあぶれるひとりになってしまう
WIOM。
「うるうびと」というのは、6月に観た小林賢太郎の舞台「THE SPOT」の演目のひとつだった。
あぶれ者のうるう人はある日、運命の女性に出会う。人と違うことはおかしなことじゃない、選ばれなくて余ったんじゃなくて、あなたは「特別な1なんだよ」と言ってくれる彼女も2月29日生まれ。「冷や麦の中に2本だけあるピンクと緑の麺は、あなたとわたしだよね」「きゅん」なんてところはちょっと笑えた。
うるう人の人生は初めて満たされた。
ところが、(なぜか分からないが)彼女は「ふつうの男」と結婚して去ってしまう。
うるう人は再び落ち込んで嘆く。特別なんかじゃない。選ばれなかったんだ。「俺は地球の盲腸だ、人類の親知らずだ!」(だったかな)
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そしてうるう人は穴を掘り始める。誰か一人が消えれば自分が余らなくなるのではないかと。
でも、掘りすぎてしまって穴から出られなくなり、うるう人は穴の中で暮らす。周りの泥を削って広げて家具をつくり、家族や親友まで泥で作る。でも、泥で作った親友は、ぽんと肩を叩いただけで崩れてしまう。手は泥だらけだ。
それから小林さんお得意の、50音を漏れなく全部使ったアナグラムがあり、救いのないままこの演目は終わる。(コントの舞台のはずなのに!)
昨日、小林賢太郎の一人芝居「うるう」が上演されることが発表された。
長々と書いてしまったのは、それで「うるうびと」のことを思い出したからだ。「うるう」が「うるうびと」なら、孤独でせつない舞台になるんだろう
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。
去ってしまった彼女は、うるう人にとって何だったんだろう。うるう人にとっても「特別」だったんじゃないだろうか。それともただ、特別だと言ってくれたから特別だったんだろうか。
わたしは、たとえわたしがどこかで特別じゃなくなったとしても、それに対してわたしが特別に思っていた気持ちは変わらないし、変えたりしたくない。穴を掘る時間ももったいない。手が汚れるのもいやだ。自分の中の「よい感情」を汚しても、じぶんの健康を損なうだけだ。
そういうふうに思うようになったよ。
あなたは特別だ。
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